妖勾伝
「俺と貴様を狙って、屋敷に呼び寄せたみたいだったが、
今の奴の目的はアヤだ。
放っておけばいい。
貴様が行かずとも、話は収まる。」
「馬鹿を云うな!
アヤを放っておけとは…
奴等が、もしアヤの力を狙っているなら、尚更だ。
たとえ今宵、
わちが闇の力を使えなかろうとも、アヤは必ず守る。
この身が朽ち果てようとも、アヤを都まで送り届けると、あの時約束したんだ!」
悲鳴にも似たレンの切なる声が、薄闇を震わせた。
アヤを、
ただ想う
切なる気持ち…
レンは目の前に立ちはだかる神月を押し避けると、怒涛の様に激しさを増す古屋敷に向かって駆け出した。
「ーーーレンっ、
待て!」
駆け出す後ろ姿を呼び止めようと、神月はその声を大きくする。
一瞬、
時が止まったように、振り返ったレンと視線が絡んだ。
「アヤの、力とは……
アヤの名は、
何なんだーーー?」
「……アヤタカ
黒葛 綾崇
(ツヅラ アヤタカ)だ!ーーー 」
地鳴りと共に白煙に包まれ始める屋敷に向かって、小さくなってゆくレンの背中を、呆然と見つめる神月。
レンの口から出た名に、ただ驚きを隠せずその場から動けなかったのだった。
「ーーーアヤが、
アヤが、あの『黒葛』の血筋を引く者だったとはな……」
可笑しさを堪えきれず、その口元から笑みが込み上げる。
「面白くなってきた……
此は、
見ものだーーー」
見上げる空は、
依然、漆黒にたなびく暗雲に覆われ、満ち月の明かりすら見えない。
その薄闇の中、
神月のほくそ笑む表情だけが、薄っすらと浮かび上がってゆくのだったーーー
今の奴の目的はアヤだ。
放っておけばいい。
貴様が行かずとも、話は収まる。」
「馬鹿を云うな!
アヤを放っておけとは…
奴等が、もしアヤの力を狙っているなら、尚更だ。
たとえ今宵、
わちが闇の力を使えなかろうとも、アヤは必ず守る。
この身が朽ち果てようとも、アヤを都まで送り届けると、あの時約束したんだ!」
悲鳴にも似たレンの切なる声が、薄闇を震わせた。
アヤを、
ただ想う
切なる気持ち…
レンは目の前に立ちはだかる神月を押し避けると、怒涛の様に激しさを増す古屋敷に向かって駆け出した。
「ーーーレンっ、
待て!」
駆け出す後ろ姿を呼び止めようと、神月はその声を大きくする。
一瞬、
時が止まったように、振り返ったレンと視線が絡んだ。
「アヤの、力とは……
アヤの名は、
何なんだーーー?」
「……アヤタカ
黒葛 綾崇
(ツヅラ アヤタカ)だ!ーーー 」
地鳴りと共に白煙に包まれ始める屋敷に向かって、小さくなってゆくレンの背中を、呆然と見つめる神月。
レンの口から出た名に、ただ驚きを隠せずその場から動けなかったのだった。
「ーーーアヤが、
アヤが、あの『黒葛』の血筋を引く者だったとはな……」
可笑しさを堪えきれず、その口元から笑みが込み上げる。
「面白くなってきた……
此は、
見ものだーーー」
見上げる空は、
依然、漆黒にたなびく暗雲に覆われ、満ち月の明かりすら見えない。
その薄闇の中、
神月のほくそ笑む表情だけが、薄っすらと浮かび上がってゆくのだったーーー