妖勾伝
ギャァァァァァァーーーーーーーッ!





化け猫の、地を轟かす叫び声。

レンの耳を、
つんざく。








目も眩むような閃光ーーー

辺り一面迸るその光から自身を庇う様に、レンは大きな瞳を細めた。








「…お、
おのれェ……

ーーーよくも、
こんな真似をしおってェ……」







闇雲に、
攻撃していたかの様に見えたレンの動き。


それは、いつの間にか化け猫を囲んで、
その巨駆を封じる為の印をかけていたのだった。





「悪く思うな…

わちもぬし相手に動いていたら、身が持たないからな。

ぬし位なら、
燿から教えてもらった術祖で、充分動きを封じれるだろう…」






真剣でなかった、
レンの太刀さばきーーー


息を落ち着かすレンの目の前で化け猫は激しく身を捩り、その印から逃れる為に身悶えた。



激しさが増す、印の力。

化け猫が、その印を解こうとすればする程に、強く弾き返した。






「グゥゥゥ………」





苦しそうに、掻き毟られる躰。



もう一度その巨駆が、大きく仰け反られた瞬間ーーー


渦めく闇達がたむろう化け猫の懐から、
うなだれたアヤの上半身が、ズルリと零れ落ちたのだった。



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