妖勾伝
レンを見据える眼差しは先程よりも鋭く、光を受けるたび珀の二つの黒目は、化け猫の眼玉に似た紅の色を放つ。
薄闇に、その姿をくっきりと映しだした。
レンの目の前に対峙する、珀の気ーーー
女の力とも思えない様な凄まじい太刀の跳ね返しに、レンは緩みかけた掌を握り締める。
ーーー珀もやはり、
物怪か…
冷たく感じる汗が、じっとりと滲み浮かんだ。
「邪魔はさせないよ。
アヤは、
あの方に引き渡す。
翠人を、もう一度蘇らせる為にね。
レン…
お前の相手は私だ!」
そう云うが早いか、
間合いを詰めいるように、素早い動きで珀の刃先がレンに向けられた。
かまいたちよりも鋭い、宙の絶ち斬れる音。
その早さに思わず斬り付けられそうになりながらも、寸で舞う様にレンはかわしてゆく。
「止めろ!
ぬしとやり合う気など
無い。」
片手で地を弾き、珀の太刀をひとたびかわすレン。
大きく叫ぶ。
「わちの邪魔立てをするなら、
ぬしも叩き斬るぞ!」
珀との距離を取るため、レンは三段蹴りで古屋敷の茅葺き屋根を一気に登り上がる。
黒く蔓延る、
闇の四肢。
その眼下に広がる、曲々しい地上を苦々しく見下ろした。
薄闇に、その姿をくっきりと映しだした。
レンの目の前に対峙する、珀の気ーーー
女の力とも思えない様な凄まじい太刀の跳ね返しに、レンは緩みかけた掌を握り締める。
ーーー珀もやはり、
物怪か…
冷たく感じる汗が、じっとりと滲み浮かんだ。
「邪魔はさせないよ。
アヤは、
あの方に引き渡す。
翠人を、もう一度蘇らせる為にね。
レン…
お前の相手は私だ!」
そう云うが早いか、
間合いを詰めいるように、素早い動きで珀の刃先がレンに向けられた。
かまいたちよりも鋭い、宙の絶ち斬れる音。
その早さに思わず斬り付けられそうになりながらも、寸で舞う様にレンはかわしてゆく。
「止めろ!
ぬしとやり合う気など
無い。」
片手で地を弾き、珀の太刀をひとたびかわすレン。
大きく叫ぶ。
「わちの邪魔立てをするなら、
ぬしも叩き斬るぞ!」
珀との距離を取るため、レンは三段蹴りで古屋敷の茅葺き屋根を一気に登り上がる。
黒く蔓延る、
闇の四肢。
その眼下に広がる、曲々しい地上を苦々しく見下ろした。