月の恋
コツ、コツ、コツ、コツ....
昼休み、数学の担当教師に、持ってくるよう頼まれていた、課題プリントを集め、職員室に続く一階の廊下を歩いていた。
窓からは、夏の兆しのする眩しい太陽の光が、茂った木の葉の隙間から、廊下に零れ落ちている。
「月子」
え?
聞き慣れた、心地良い声に振り返ると、ふんわりセットされた、栗色の柔らかそうな髪を、窓からの光にキラキラ照らされた、スラッと背の高い男子生徒が立っていた。
真っ白なワイシャツが、爽やかな彼に良く似合っている。
「マコ」
少し驚いて、応えるように彼の名を呼ぶと、マコは優しい陽だまりのように微笑んだ。
あまりにも綺麗な笑顔に、思わず見惚れてしまう。
彼は、私と同じ2年の冬月 真(フヅキ マコト)。
私たちは幼馴染であり、恋人同士だ。