月の恋
近づいてきたマコに、言葉を続けた
「なんでマコがA棟にいるの?」
私たちの通う清華学院は、A、B、Cの3棟構造で、マコの教室はC棟にあり、B棟を挟むため、かなり遠いのだ。
だから校内で会うことはあまりない。
「月子に会いたくなったから。だめ?」
マコは恥ずかし気もなく答えて微笑む。
いつもの事だけど、この日本人離れしたストレートさには慣れない。
彼の独特の雰囲気に酔いそうになる…
「ダメなんて、言ってないよ」
私は頬が熱くなるのを感じて、くるりと背中を向けてしまった。
「職員室に、プリント届けなきゃいけないから」
歩き出そうとすると、
マコはクスリと笑って、優しく後ろから抱きしめてきた。
「行かせない…、って言ったら?」
耳元でまるで吐息のように囁かれ、耳まで熱くなる。
「ゃ、やめて。人が来たらどうするの?」
焦るように言って、マコの腕から逃れようと、身を捩るが、男の力にかなうわけがない。
「大丈夫だよ。知ってるでしょ?ここ、ほとんど人が通らないの…。」
し、知ってるよ、でも、そうじゃなくて…っ
「ぅ……だめだって……プリント届けなきゃ」
必死に抵抗するけど、まったく離してくれそうにない。
「ね…はなして…」
恥ずかしさのあまり
真っ赤になってうる目で振り返る。
「…月子、わかってる?」
「へ?」
「そんな顔されたら、俺、止まらないでしょ?」
マコはくるっと私を自分のほうに向かせ
顔を近づける…
きめの細かい綺麗な肌、通った鼻筋、長い睫毛、形の良い唇…
マコの端正な顔が近づくにつれ、一層を頬に血がのぼる。
「ちょ…マ、マコっ??」
「月子がわるぃ…」