貴方ハ今、何処二居マスカ
驚いて顔を上げると、綺麗な顔をした男の人が木の根元にもたれかかる様に座っていた。
『……っ失礼致しました』
全く気が付かなかった。
「え? あー…そっか………」
男の人は苦く笑って後頭部を掻いた。
「君、花魁?」
『………え』
「……その様子だとまだ遊女(あそびめ)かな?」
男の人は言いづらそうにしながら質問をしてきて、私は首を振った。
『…屋敷の中では花魁を受けております』
「あ、そーなの。
出歩けるの? いいなぁ」
男の人の目は寂しそうに見えた。
深い悲しみと羨望が、その薄茶色の瞳に影を落としていた。
『………貴方様は何故此処に?』
「ん?
……此処が僕の居場所だからだよ」
再び悲しみに満ちた目をしたが、すぐに無邪気な笑みを浮かべた。