闇ノ雫
「は、離して……っ」
この子が声を上げれば、父上達に見付かる。
何としてでも、この子だけは殺されたくない……
そんな思いからか、俺の手は女の子の口を塞いでいた。
「……駄目だ、早く隠れないと」
冷静に言う俺を、目を真っ赤に腫れさせながら見上げている。
……それは逆に、女の子を怖がらせるだけだった。
だけど今は、助けることが優先。
俺は一旦女の子の手を離し、腕をしっかりと掴んで走り出す。
「離してよ!母様と父様の所に行かせてよっ!」
「……君は死なせないから」
「うるさいっ、早く離して!」