闇ノ雫
知らず知らずのうちに、俺は自分の苦無を小松の手に持たせて、ぐいっとその体を起こした。
「何これ?私に、何をしろっていうの?」
「俺を殺せ。復讐を果たせ……」
「な……っ」
見開いた小松の目が俺を見据えるが、小松の手の上に自分の手を乗せ、苦無を心臓に向ける。
「山崎は、私の親を殺していないんでしょ?それなのに何で……」
「……そうだ、俺は殺していない。
だが、俺の親はもう既に死んでいる。
山崎家の者は、俺しか残っていない……俺が殺していなくても、山崎家の一人であることに変わりはない」
「だけど……無理だよっ!」
「俺が憎くないのか?俺はお前に憎まれて当然だ。……俺の親が、お前の親を殺したんだぞ?」
俺が説得するようにそう言うも、苦無が心臓を貫くことはなかった。