闇ノ雫
閑散としていた。
家も、隠れんぼをした庭も、消えていたのだ。
芳乃も、芳乃の祖父も。
いや……そんなはずはない。
きっともう、芳乃の家からは大分離れたんだ。
そう言い聞かせて、芳乃の家がある方向に気付けば走り出していた。
──今すぐ行かなければ、芳乃が本当に消えてしまうような気がしてならなくて、もつれる足を必死に動かした。
走って
走って
走って──。
だが、いつまで経っても、永遠とも思えるほどの野原から脱し、芳乃の家に辿り着くことはなかった。
どれくらいの時間が経ったであろうか、空には闇が漂い始める。
天を仰げば、無数に広がる星たち。