闇ノ雫
俺は早く、雇ってもらう場所を探したいというのに、何故その邪魔をする?
本当、こいつにとっても俺にとっても無駄だ。
「どうでもいい。俺はもう謝った、それで充分だろう。というか、たかがぶつかったくらいで刀に手をかけるとは呆れた男だ」
……あぁ、いけない。
火に油を注いでしまった。
思ったことがそのまま声に出てしまったではないか。
時間の無駄なのに、その無駄を自分で増やしてどうする。
こんな俺の台詞に、この輩が肩を震わすのは必定。
内心焦ったが、そんな気の乱れはすぐに消え去っていく。
が、男はついに抜刀した。
周りからは好奇の視線……あまり見ないでほしいんだが。
その意味を込めて、軽く睨みをきかせると、傍観者たちはそそくさと俺達の横を通り過ぎていく。
そして、男に視線を戻す。
男の手まで怒りで震えていた。
だが俺には、緊張感も何もない。
ただ、さっさと働く場所を見つけ出したい……それだけだ。