闇ノ雫
全く根性がないな。
本当……無駄だ、この時間。
だから、
──ドスッ!
「ぐあっ!」
俺は無言で男の鳩尾に手刀を入れた。
軽く悲鳴を上げた男の手から、刀が滑り落ちていく。
それを拾おうとするから、刀を遠くに蹴り飛ばしてやった。
それから俺は自分の手を見つめ、握ったり開いたりを繰り返す。
「鈍ってるな……」
やはり、こんな生活が長く続いているからだろうか。
この、京や大阪を歩き回る生活が。
しばらくの間、特訓などしていない。
俺は軽く息をついて、男を放置し、その場から離れていった。
ようやく働く場所を探せると思い、嬉々としていた。