闇ノ雫
そして、今度こそ歩き出そうとしたとき。
「お前、なかなかいい腕してんなぁ」
凛とした声が、俺の耳に入ってきた。
顔を上げると、浅葱色の服を纏った男が一人。
男はじっと俺の目を見据えると、何か面白い物を見つけたかのように、口端を少し上げた。
……新選組、か。
噂で聞いていた……次々と人を殺す、人斬り集団と。
その新選組が俺に何の用か。
まさか、さっき男を倒したから、不逞浪士と間違われた?
それは困る、俺は特に悪くない。
というか、無差別に女子供までを斬りそうな新選組など、俺は真平ごめんなのだが。
そういう所が両親と重なってしまうから、新選組は、嫌いだ。
「……何でしょうか。用件があるのであれば早急にお願いします」
とにかく早く終わらせたい。
少し心の中では苛立っていた。