闇ノ雫




だが、次の瞬間男の口から出たのは……予想外の物であった。





「その旅人の格好。仕事を探しているだろう」


「……は…貴方には関係ないことでは」





何故、そっちに話が転がっていくのだろうか?





「俺の見た限り、お前はどっかの流派の忍だ。忍術だけではなく……剣術もそこそこできる。出来ることならば、人は殺したくないから、お前はさっきの男を殺らなかっただろう?それから、お前のその性格からして大分口は固い」


「……」


「強い忍の集団はここらにたくさんいるから……お前は長州や薩摩ではない、というか訛ってないから当然か。大阪か京か、大津あたりだろう」





俺のことを、さっきのちょっとした事件でほとんど読み取った。


その通り、俺は大阪で生まれ育った。


だが両親が江戸生まれのせいか、訛ってはいない。


両親は江戸で腕を上げたが、多くの忍はここらの地域に滞在しているため、大阪まで来たという。


……それにしても、何だこの男は。


どれだけ、洞察力が優れているのだろう。



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