闇ノ雫
両腕を片手で掴み、女の頭の上まで持ち上げると、身動きが取れないようにする。
そして、苦無を喉元に突きつけ問い詰めた。
「名は、何という」
女は何を考えているのか、ただひたすら、俺の目を睨んでいるような気配を感じられた。
また気が乱れた瞬間、女は俺が拘束していた腕を振りほどき、自分の懐から苦無を取り出そうとした。
俺は持っていた苦無を投げ捨て、その動きを止める。
両手で女の腕を掴み、地面に押し付けた。
月明かりで僅かに目と目が合う。
その目を、いつか見たことがあると感じた。
ドクンと心臓が大きく跳ねるが、それを打ち消すように、女の顔を覆っている黒い布に手をかける。
「負けを認めろ」
パサッとはぎとった先にあったその女の顔。