闇ノ雫
いいや、証拠などなくても。
お前が俺を忘れているとしても、信じる──。
やがて芳乃の口から出たのは、本当に、非現実的な言葉であった。
「私は……未来から来たの」
俺の中で、時が止まった。
“未来”
それは想像もできない場所。
……どういうことだ?
芳乃は、この時代の人間であるはずなのに。
それ以前に、どうすれば時空移動などできるのだろうか?
そこまで考え、はっとして、俺はそれらの疑問を打ち払った。
決めたばかりなのだから、芳乃を信じると。
如何なる理由であっても、だ。
「そう、か……」
十年前に見た光と、つい昨日見た光は一致する。
もしも、本当に時空移動をしたならば、その光が過去と未来を繋ぐということか?