闇ノ雫
そう言いながら、くしゃくしゃと僕の頭を撫でて、にかっと笑う。
「僕……父上みたいに、強くなれるでしょうか?」
「そうだな。だが、山崎家の跡取りは、心身共に強くないと務まらない」
父上は、僕の誇りだ。
ただ純粋に、かっこいい。
そう思っていた。
「はい。頑張ってみます」
だから僕は、あの日の晩に決めたんだ。
父上のような強い忍になる、と。
──忍がどんな存在であるのかも、まだ知らずに。
あの、苦無を投げる練習の意味も。
“父上のような忍になりたい”
そんな考えは、あの事件を堺に、脆く砕け散っていった。