闇ノ雫
……しかし、とんでもない事態が発生した。
加勢を許したはずの会津が、約束した時刻になっても姿を現さなかったのだ。
「近藤さん、もう行ってもいいんじゃねえか」
副長は眉間にしわを寄せ、静かに怒りの声を上げる。
その言葉に、局長もしっかりと頷いた。
「……そうだな。それでは、行くぞ!」
はいっ、と返事をそろえ、俺は副長に続いていく。
ふと振り返ると、ささっと闇に紛れていく小松の後ろ姿が見えた。
……どうか。
どうか、池田屋が本命ではありませんように。
小松に無理はさせたくない。
四国屋に、敵がいますように。
誰かのためにこんなに願ったことなど、今までにあっただろうか──。