闇ノ雫
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そして、俺達は市中を駆け抜け、ついに到着した。
“四国屋”と書かれた提灯が、何故か不気味に見えてしまう。
暖簾をくぐった副長は、声を張り上げた。
「御用改めである!主はすぐに出てこい!」
……だが、その店に感じられる雰囲気は、少しも張り詰めていなかった。
案の定、奥から出てきた主は、不思議そうな顔をしている。
「あ、あの……うち、何かしました?」
きょとんとした表情でそう言われれば、ここが本命ではないことなど、容易に理解できた。
ぐ、と手に力が入る。
「くそ……っ」
気付けば地面を蹴っていた。
──本命は、池田屋。
「おいっ、山崎!」
副長たちの声が、どんどん遠くなっていくと同時に、俺の足は確実に池田屋へと向かっていた。