闇ノ雫
「もうすぐ来るはずです、池田屋が本命だと確定したので」
「そうか、分かった!……おい!副長たちが来たら、斬り捨てから捕縛に切り替えだ!それまで粘れ!」
永倉さんがそう叫ぶも、聞こえてきた返事はたった数名のものだった。
……やはり十名では、その上会津もいなければこちらが不利であることなど明白だった。
この時、永倉さんも手を負傷、藤堂さんは額を斬られていたのだ。
さらに──。
「ごほっ……」
二階へと駆け上がる途中、誰かの咳が聞こえてきて、反射的に苦無を握りしめる。
残り数段の階段を上がっていく。
暗い室内、目を凝らせばだんだん見えてくる浅葱色。
その体が小さくうずくまっていることに気がついた。
「沖田さん……?」
静かに声をかければ、その肩は一瞬跳ね上がり、振り返って俺の目を見据える。