闇ノ雫
その手は小刻みに震え、俺の存在に気付いているのかは分からないが、とにかく声も発せられない様子だった。
……怖かっただろう。
よく耐えた、お前は……。
そんなことを考えながらも、俺は吉田の背後に周り、その首に苦無を投げつける。
吉田は即死した。
俺にとってもこれは初めての感覚だった。
嫌いだった、人が死ぬのは。
俺の両親が、小松家を倒した時依頼、人殺しなど嫌いだった。
……だが決めたのだ。
小松を守るためであれば、人を殺しても構わないと。
「山…崎……」
ようやく、声を発することができた小松の体をゆっくりと持ち上げる。
「小松、大丈夫か!?」
否、小松は吉田の遺体を見るなり、虚ろになっていた目を少し見開いた。
同時に、ぐったりと小松は俺に体を預ける。
「小松……!」
もう既に、小松の意識は遠い所へと行ってしまっていた。