闇ノ雫
「この間言ったはずだ。もしもの場合は、すぐに離脱しろと。お前、三日も眠ってたんだ」
硬直している小松をよそに、俺の口からはそんな淡々とした言葉が飛び出す。
お前は無理をしすぎだ。
女があの場にいるなんて、無茶な話だ。
それなのに、なんでお前は……死ぬかもしれないのに戦い続けた?
「私は……途中で逃げたくなかったの」
そんな俺の中の疑問に答えるように、小松はその言葉を発する。
「──今まで言ってなかったけど、私の両親は、忍に殺されたの」
それを聞いた途端、俺の心臓が早鐘を打つ。
思わず、小松の体を離していた。
……覚えてるのか?
「どこの忍が殺したか、分からない。だから私は……強くなって、日本一の忍になって、そいつらを突き止めて……復讐したいの」
「小松……」
「それからね、山崎。私は……汚れている。今まで、たくさんの人をこの手で殺した。復讐したい……強くなりたい一心で」
「……」
「……私に逃げる事なんか許されないの。そんな甘い事考えていたら、復讐なんか出来ないでしょ?」