闇ノ雫
このとき俺は、大きな間違いを犯した──。
小松を伊東さんの所へ行かせたこと。
それにより、小松が伊東さんに接吻されたこと……。
……自分は、監察なのに。
自分の気持ちを、表に出してはいけないのに。
自分の想いに、蓋をしたはずなのに……何故、俺も小松に接吻してしまった?
“すまない”と小松に謝ってから、逃げるように自室に戻ると、俺は拳を壁にぶつけた。
「くっ……」
沈めることができなかった。
怒りを、悲しみを……あの、想いを。
あんな過去さえ、なければ。
自分の気持ちに素直になれることが出来たのだろうか?
鈍い音を立て、もう一度壁にぶつける。
伊東さんに向けての怒りを。
そして……自分に対しての、怒りを。