闇ノ雫
「……移転、するか」
そのことを副長に報告すると、それは副長も感ずいていたらしい。
「それでは、移転先の話し合いを幹部内で行いますか?」
「……いや、それは後だ。俺の中で、一応目をつけている場所があるのだが……」
流石副長、行動が速い。
俺が報告する前に、既に目星をつけていたとは。
副長は一つ咳払いをすると、俺に向き直った。
「西本願寺だ」
……西本願寺?
無意識に、少しだけ眉間にしわが寄る。
「副長。恐れながら申し上げます。西本願寺は、京の人々の信仰が厚く、そこに移転となると礼儀に反するのでは。それから、長州藩の隠れ蓑(かくれみの)のような場所で……」
そこまで言って、俺ははっとした。