闇ノ雫
しかし、そんな副長の……みんなの思いは儚く散った。
幹部が集まり、俺もその場にいたのだが、山南さんは思っていた通りこの意見に反対した。
伊東さんや近藤さんは賛成し、移転先は西本願寺にしようということで話は進んでいくが、そうなっても山南さんは何度も抗議した。
そしてそれから数日後。
『江戸へ行きます』という手紙だけを残し、山南さんは脱走をした。
“局ヲ脱スルヲ不許”
脱走は、隊規に背いたとして切腹を申し付けられる。
……山南さんは、兄のような存在だった。
何かある度に、俺にまで気をつかってくれたのだ。