闇ノ雫
いつ見ても、穏やかな笑顔を浮かべていた。
そう、切腹をする当日も……あの方は、笑っていた。
山南さんの希望により、介錯は沖田さんが務めることになった。
──心から、慕う人だった。
山南さんが切腹をしたその夜中。
屯所内を監視していると、真っ暗な副長の部屋から、静かに啜り泣く声が聞こえた。
「すまねぇっ……」
掠れた言葉と、嗚咽。
この出来事により、歯車も狂い始める。
それは時代だけでなく、皆の心も。
切腹当日、副長はいつものように厳しく冷酷な表情を浮かべていた。
だが、皆に隠れ、一番深い傷を負ったのは、紛れもなく副長だった──。