変わり者同盟
自分を叱っていれば、突如前から笑い声が聞こえ、私は驚いて頭を上げた。

顔を上げれば、小野先生がとても面白そうに笑っていて・・・私の目が点になった。


え、だって・・・・・・笑うところじゃない、よね?


小野先生は笑いの波からなんとか抜けると、珍しい物を見るような目で、私を見た。


「ふふっ。比佐乃さんって、ド真面目なのね。
別に先生、怒るつもりも責めるつもりもないのよ。」

「・・・へ。」


小野先生の言葉に私は間抜けな声を出してしまった。

小野先生はにっこりと“完璧”という言葉が似合う微笑みを見せて、あっさりと言った。


「比佐乃さん。恋は、人を惑わせるものよ。

考えるな、なんて言ったって、無駄よ、無駄。
無理に決まってるの。

ふふふ。先生はね、無理なことは言わないわ。」


・・・・・・・・・はへ・・・?

あまりに予想外な言葉に唖然としていれば、小野先生は笑みを浮かべたまま、含みのある口調で言った。


「けれど、きちんと絵は完成させてね。

まぁ、今の比佐乃さんなら、大丈夫よ。考えずにいられない、彼のイメージを、絵にそのまま表せばいいんだもの。」


久流君を、絵に、表す・・・・?

首を傾げた私に、小野先生は楽しそうに、歌うように耳元で囁く。


「love song(愛の歌)は、あるんだもの。love picture(愛の絵)だって、あってもいいでしょう?」

小野先生はスッと私から離れると、悪戯な笑みを浮かべた。


「ふふふふふっ。頑張ってくださいね♪」

小野先生は、するりといつものように敬語に戻り、なんでもないように他の子に声をかける。


私はというと――

なんとかかんとか英語を訳し終え、loveの単語に、腰を抜かしかけていたのだった。



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