変わり者同盟
気まずさがピークに達した時――


ガチャッ

事務室につき、久流君は何のためらいもなくドアを開けた。


・・・ノック、しなくて良かったのかなぁ・・・・・・。

不安に思いつつも足を踏み入れれば、聞こえてきたのは案の定というかなんというかの、大河内さんの怒声。


「久流和真ぁあぁあ!!!ノックぐらいしなさい!あんたそれでも校長の息子かい!?もっと礼儀をわきまえろ!!!礼儀をっ!!!!!」

ひぇぇぇぇぇ・・・
ビビる私とは裏腹に、久流君はきょとんとした顔でさらりと答える。

「礼儀?わきまえてるじゃないですか。ほら、俺、ちゃんと敬語使ってますし。」

・・・・・・・・・久流君って、色々すごいよね、うん。

怒りで顔を真っ赤にしているもの凄い大河内さんを前に、その態度って。


「久流和真っ!!!あんたの礼儀はそれだけ「早く本題に入りましょうよ。」」

大河内さんの怒声を、またもやさらりと・・・今度は遮った久流君。

・・・・・・・・・久流君って、色々すごいよね、本当。


「あ、あ、あ、あ、あんた、ねぇ・・・・・・」

大河内さんの眉間には深いしわ。額には青筋がぴくぴくと浮きだっている。

そんな大河内さんに、久流君は変わらぬポーカーフェイスでまたもやさらりと言う。


「大河内さん、そんな怒ると、血圧あがっちゃいますよ。もう年なんだから、自分の体、気づかってあげないと駄目じゃないですか。

なんで怒ってるんですか?理由、俺、聞きますよ?・・・30秒ぐらいなら。」


・・・・・・・・・久流君って、色々すごいよね、本気で。

大河内さん、もう、脱力しちゃってるよ・・・。


「・・・・・・あの、大河内さん・・・すみません・・・。」

いたたまれなくなった私は、とりあえず大河内さんにぺこりと頭を下げた。


「あ、あぁ・・・別に、あんたが謝る事じゃないよ・・・比佐乃冬香。」

呼ばれた自分の名前に、私は目を瞬いた。


「なんで、私の名前・・・?」



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