変わり者同盟
確か昨日は大河内さん、私の名前知らなかったんじゃ・・・。
しかも、私、名乗ってなかったよね?


「あたしは事務員だよ、比佐乃冬香。
あんたの名前調べるのなんて、簡単さ。」

どうってことのないように大河内さんは言い、久琉君に視線を戻す。


「で、本題に入りたいんだったな?久流和真。」

「はい。よろしくお願いします。」


久流君はやっぱり、変わらないポーカーフェイスで、さらりと応じる。

気負いも戸惑いも緊張もない。いつも通りの彼。


大河内さんはスッと目を細め、そのままの調子で久琉君に告げる。

「久琉和真、あんたは傷つくよ。」

「知ってます。ある程度は。」


やっぱりそのままの調子で、さらりと久流君は応じた。

大河内さんは、そんな久流君を鼻で笑う。


「ある程度、ねぇ・・・。ま、いーや。知ってることにしといてやるよ。

で?あんたは?」


突然大河内さんと視線が交わり、私の心臓が飛び跳ねた。

「知る勇気、あるわけ?」


ギロリとした瞳からは圧力がかかるけど、私はそんな圧力を振り払うようにして、コクリと頷いた。

「あると、思っています。」


――嘘かもしれない。

今でも頭の中では“気まぐれ説”がぐるぐる回っているし、傷つく久流君を見たときに私が支えられるのかも分からない。

それでも。

知りたい、と。
どうしてもどうしても知りたい、と。

思う気持ちは、嘘じゃないから・・・・・・。


「大河内さん。私は、昨日と今日で心変わりなんかしてません。
聞かせてください。“本当の裏庭”のこと。」


私は、睨むかのように真っ直ぐに、大河内さんを見つめた。



< 61 / 140 >

この作品をシェア

pagetop