夏休み
雪美の後ろに着いて歩き出した直哉は、空いた手が虚しく、ポケットに突っ込んだ。
「なんだ、直哉は年上の女が好きなのか」
後ろを歩いていた優が耳打ちしてきた。
「なっ!?ちげぇよ!」
直哉は図星の余り、大声を出してしまった。
「なにしたの?」
「どうした?」
後ろにいた晴美と哲が、寄ってきて、雪美もその声に振り向き、首を傾げ直哉を伺った。
「な、なんでもない!」
直哉は明後日の方向を向いて、大声で云った。
横にいた優はにやにやしながら直哉を見た。
「あっ、着いたよ」
雪美が止まった場所は、一本道から少し外れた所にあり、草が生い茂る中、小川流れていた。
「・・・?あれ!?」
懐中電灯を消し、直哉は目を凝らして草村の川を覗いた。
「はぁ〜、すごい・・・!」
月や星の光で当たりは少し明るいかったが、直哉の目の前に、沢山の小さな光りが見えてきた。
「今年はいつもより雨が降ったのもあるし、この村は涼しいから他の所に比べて蛍が遅く見えるのよ」
「ほたる・・・?」
「蛍知らないの?」
晴美が驚いて、大きな声を出した。
「ほたる、知ってるけど生きてるのなんか、初めてだよ」
直哉は目の前に広がる蛍の光り達に魅入った。
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