夏休み
直哉はグラスに残っていた麦茶をイッキ飲みし、立ち上がった。
「すみません、今日はお邪魔しました」
直哉は台所にいる雪美に聞こえるよえに、大きめの声で言った。
「え!お昼食べて行きなよ」
台所から顔を出して、言ってきたが、直哉は丁重にお断りし、玄関を出た。
外に一歩でると、先程いた部屋とは別世界のように、陽射しが容赦なく襲いかかり、一気に汗がにじみ出てきた。
「あれ?直哉じゃん」
玄関を出ると、哲と優が虫捕り網を片手に道にしゃがんでいた。
「おぅ」
「なんだ晴美んちにいたのかよ」
「さっき誘いに行ったんだぜ」
「ん、晴美に聞いた」
「あれ、めし食ってかないの?」
「てか、ダメだったのかな」
「いや、今雪美さんが支度始めてたよ、中に入ってたら」
そう言うと、直哉は立ち去ろとしたので、哲が呼び止めた。
「え、お前は?」
「俺は帰るよ」
片手を上げて、手を振りながら直哉は歩き出し、二人がそれを見送った。
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