This is us -2



いきなり言われて驚いている私を横目に、先輩はデスクに向かう。

「ほら、ぼさっとしてると残業になる」


「はっはい!」



門倉さん。入社してから隣のデスクで、何かと面倒を見てくれている。

21歳の私よりも4つ年上で、しっかりした大人の男性。

怒られてばかりだけれど、優しいんだよね。


でもどうして急に飲みに行こうだなんて言ったんだろう。


無事に仕事を終えて、門倉さんを見ると。

トレンチコートを羽織って、帰る支度をしていた。


「お疲れ様でした…あの、本当に飲みに行くんですか?」


「お疲れ。行かないなら別にいいけど、何か元気なかったから声かけただけだし」


あぁ、そっか。私が元気ないって、気付いてたんだ。

「でもあたし、今日は…その…」


持ち合わせがない。

「何だよ?」

「お金がないんです。だから明日でもいいですか?」


そう言うと、門倉さんはぷっと吹き出して笑った。

「ばーか。奢るわ、そんくらい」


そんなに笑わなくても…。
今日はたくさん飲んで、元気になろう。


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