This is us -2
「どう?少しは思い出した?」
「優花ちゃん、そんなに急には…」
アルバムを見ながら、松川は色々な事を話してくれた。
「…いや、聞けて良かった」
「蓮ちゃん、無理しないでね?」
「あんた、さっきからうるさい!」
思い出したかと聞かれたら、イエスとは言えない。
けれど、瞳の奥深くに映し出される映像が何回かあった。
はっきりはしていないが、それは温かくて包みこまれるように柔らかな記憶。
「俺…遅刻しそうだったんだよな…あん時」
「遅刻?」
松川が怪訝そうに首を傾げる。
「バイクで事故った時…雨、降ってた」
「蓮ちゃん!!」
佐々木がぱあっと笑顔になって、興奮ぎみに俺の手を握る。
「よく分かんねぇけど、急いでてさ…」
そう言った瞬間、ヘルメットを手に取った自分が浮かんで。
「さとりと、何か約束があったんじゃないの?」
約束…
『…たい』
『美味しいものが食べたい』
「美味しいものが食べたいって…」
あいつの、声…。
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