黒猫屋敷


『おいでやすぅ』

からくり人形の女は
長い黒髪をダラリと
垂らしたまま客に向かって
頭を下げた。


いきなり目の前にいた
女にびっくりしたカップルは


きゃーきゃー叫びながら
抱き合っている。



『な、な、なんなんだよ!!
こいつぅ!』


カップルの男は
からくり人形に向かって声を荒げる。





『クックックックッ、、、ほな。
楽しんでおくれやす。』


からくり人形は
正座したまま後ろへと下がり


しばし6番の部屋には
カップルだけ取り残された。



カップルの女の子は
ふるふると震えながら
辺りをキョロキョロするが
真っ暗で何も見えない。




ふいに
ギィコォ…ギィコォ…


とやたらと広い真っ暗な部屋に
不気味な音が響く。



女はさらに叫びながら
泣きわめいている。


『嫌だぁああ!帰りたいよぉ!!』


静かな部屋に
響く泣きわめく声と重なるように
ギィコォ…ギィコォ…と

いう不気味な音も大きくなる。



『嫌だぁあああああ!』
パニックになっている彼女を
彼氏は取り残して暗闇
をひたすら走り回り出口を探す。



『バッ』
とロウソクが
暗闇に灯ると同時に

彼女の悲鳴がひびきわたる。


『嫌だぁあああああ!
イヤイヤイヤイヤ嫌だぁあああああ!』


彼女の目の前に

ロウソクを片手に

ニンマリと微笑んでいる老婆が
彼女の顔を見ていた。





『ホラァア?コレミナサレェ…』

老婆はそう言うと
隣に縛られたままの
赤ん坊を女の子に見せた。

『可愛かどぉ…』


老婆はニヤリと笑うと
縄でくくられた赤ん坊の
頬に向かって

持っていたロウソクの
火を当て始めた。




『ヴギァッァアアア…
ウンッギャァアア…ヴギァッヴギァッ』



縛られた体を必死にバタつかせながら

大声で泣き始めた。



黒猫は
ここからだ。
そう思い黒い体を乗り出して
モニターに食いついた。


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