恋の片道切符
やがて電車が止まり、扉が開く。
そして皆、どっと降りていく。
「それではまた」
私は篠崎さんに別れを言い、電車に乗った。
「はい、では」
背中越しに篠崎さんの別れの言葉が聞こえた。
篠崎さんの表情は見えないが、優しく微笑んでいるのが何となく理解できた。
そして彼の顔がよく見えるボックス席に腰掛ける。
窓を見れば篠崎さんの横顔がよく映えている。
ボウ、と彼を眺めているうち、彼は私の方を向き、ゆっくりと口を動かした。
彼の口の動きをじっと見る。
(ま・た・あ・し・た)
「また明日」
と言っているのがわかった。
私も声に出さず、口だけを動かしてこう言った。
(ま・た・あ・し・た)
「また明日」
と。