恋の片道切符
「しのざき、けいご…」
彼の名前を呟きながら歩き回る。
その時だった。
ポン、と誰かに肩を叩かれた。
振り向くと白い生地に黒のオシャレなロゴが入ったTシャツと深い青色のGパンを履いた背の高い男の子が立っていた。
「えっと、松井紗理奈って子?」
白い歯を見せて言う。
コクンと頷くと彼は安心したように笑った。
「良かった。いなかったらどうしようかと思ったよ」
「…」
名札を見れば、先生が言った通り白いカードで作られた名札が付けてあった。
きちんと平仮名で「しのざき けいご」と書かれている。
「しのざき けいご…」
ふと口にすれば彼は振り向いて「俺の名前、知ってるの?」なんて聞いてきた。
私は首を横に振り、「名札…」と答えた。
彼は納得したように「ああ、名札ね」と言った。