恋の片道切符
終点
「間もなく終点ー」
車内アナウンスが流れ、私はイヤホンを外し、音楽プレイヤーを鞄の中に閉まった。
そしていそいそと降りる支度を始める。
駅のホームに電車が入った。
私が乗っている車両も駅のホームに入る。
その時、一瞬、ほんの一瞬、あの人の姿が見えた気がした。
まさか、と思いながら振り返ってみる。
やがて電車は定位置に止まり、プシュー、とドアが開いた。
皆、ぞろぞろと一気に電車を降りる。
私も人の波に押され、足を取られながらも階段に向かって歩き出した。
そして先程のホームに立っていた駅員さんの横を通り抜けようとした。