恋の扉を開けて
「足が棒になっただろう?疲れた?」

「はい、事務系ですので。」

「客の反応に手応えを感じなかった?」

「わかりませんでした。」

「たぶん、明日もリピーターで混むと予想している。君のリピーターだ。初日の新人メイドは必ずネットの掲示板に書き込まれるからだ。ダブル・シルクの新人メイド、ルリルはこうだったとね。どうする、今日だけで辞めるか?明日も店に出るか、続けるか、自分で決めるんだ。」

「明日も出ます。」

「そうか、まだ自分に戸惑っているようだな。他のメイド達の受けも上々だ。ビリーも絶賛していた。何か俺に言いたいことがあったら何でも言っていい。」

「今はまだ何もありませんが不安なだけです。どっちが本当の自分なのかわからなくなってしまいそうで怖いんです。ただそれだけです。接客のコツやテクニックがまだ身についてないという不安よりも、そっちの不安の方が大きいんです。どうしたらいいのでしょうか?教えてください。他のメイドはそんなことはないのでしょうか?本当の自分を見失ってしまわないのでしょうか?」

「ルリル、そんな心配は全くないと言い切れる。これはビジネスだ。メイドは仕事だ。違うか?」

「そうですね、仕事です。」

「遅くなったからもう帰った方がいい。明日も待っているよ。」

「はい、ありがとうございました。失礼します。」

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