恋の扉を開けて
δ.有り得ない関係
次の金曜の夜、ルリルは俺のオフィスに来た。

店をチラリとのぞいたら胸がドキドキしたらしい。

自分で言っていた。

「専務、金曜の夜もお店に出させてもらえないでしょうか?」

「この時間帯はサラリーマンが多い。やはり君と同じ会社帰りで、しかも彼らのほとんどは土日には滅多に来れない客層だ。土日だけの君を知らない客ばかりだと思う。メイクはできるのか?」

「はい、ビリーのテクニックは覚えています。」

「じゃ、支度してもらおう。店へ出る前にもう一度オフィスに来てくれ。」

「はい、専務。」

金曜の夜も出るとなるとコスチュームを着ている時間が長くなるじゃないか。

俺の頭の中は今グチャグチャしていた。

頭を抱えた、ルリル、君のせいで。

だが俺が彼女を拾ってきたんだった。

この困惑の全ては元々自分のせいだったのだ。

否定したかった。

日曜の夜、店を閉めた後、彼女を抱くことに抵抗があった。

異常としか思えない。

俺には彼女ほど割り切れない。

できなくはないが矛盾を感じた。

何が正しくて何がそうでないのかあやふやになってきた。

彼女は病気なんじゃないか?

そう思いたかった。

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