恋の扉を開けて
「まず食品衛生管理と酒類販売管理の資格を先に取得したいのです。」

「先に?」

「それからティー・マイスターの資格を取り、紅茶の専門的な知識を学びたいと思っています。」

「・・・・・」俺は絶句した。

なんてことだ。

彼女がそこまで行き着くことを想定できなかった自分に腹が立った。

体調を崩すのは陽を見るより明らかだ。

「専務?」

「どうしてもか?」

「はい。すぐに取りかかりたいのですが、それには専務のご承諾をいただかないとできないのです。」

「話がよくわからないが?」

「チャットでのやり取りを閉店後にさせていただきたいのです。」

「それは全く問題ない。勉強時間は?」

「会社の帰宅後から閉店時間までの4時間です。」

「なるほど。考えたものだ。」

「専務のご意見を伺いたいのですが?」

「考えさせてくれないか?」

「いつまでにご返答いただけますか?」

「明日返事する。」

「わかりました。」

「スープが冷めるよ。」

彼女は目の前のスープの存在を忘れるくらい熱心だった。

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