恋の扉を開けて
ビリーは私のメイクを手早く仕上げた。

「出来たわ。あたし、この1年ここでたくさんのメイド嬢たちを仕上げてきたけど、あなたのようなメイドは初めてよ。専務があなたにぞっこんなのが手に取るようにわかるわ。あたしは女である前に男だから。ネームは何て言うの?」

「ルリルです。」

「まるで異世界のものみたい。」

「ありがとう、ビリー。」

私は全身を鏡に写して眺めた。

別人だった。

店へのドアを通った。

長谷川専務が私を待っていた。

「専務、支度できました。」

彼はじっと私を見つめた。

「君のメイドネームは?」

「ルリルと申します。」

「年はいくつ?」

「あなたが決めてください。」

「好きなドリンクは?」

「レモネードです。」

「お腹が空いたら何を食べたい?」

「あなたと同じものにします。」と言って微笑んだ。

「オーケーだ。何か質問はある?」

「いえ、ありません。」

「気分はどう?」

「実際にやってみないとわかりません。気分は悪くないです。」

「そうか、土日は混むが君にとっては初日だから客の反応を見るだけでいいよ。サラリとかわすくらいの浅い接客で構わない。君のフォローは他のメイドにやらせる。心配ない。」

「はい、専務。」

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