恋の扉を開けて
「ルリル、目を閉じて首を反らし顔を空に向けて。」

彼女は無言で僕の指示に従った。

白いのどと首筋が僕の目にはまるで大理石の彫刻のように見えた。

「柱の方へ。」

リビングの両端に太い円柱が1本ずつあった。

「柱に寄りかかるように立って。」

彼女は柱にもたれかかり、誘うように左手を前に差し出した。

「テーブルの方へ。」

家具は全てアンティーク調で統一されていた。

彼女は木製のチェアに座り頬杖をついて僕に視線を寄越した。

僕はキャンドルに火をつけた。

「重いかもしれないがこのロウ台を持って階段へ。」

2階へ通じるらせん階段は手すりもアンティーク調だった。

下から上へ緩やかに右にカーブしていた。

彼女はゆっくりと階段を登った。

僕は下からシャッターを押し続けた。

それは階段のちょうど半分辺りで突然起きた。

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