恋の扉を開けて
「あっ。」

ルリルの裸足の足元がぐらついた。

ドレスのすそを手すりの何かに引っかけたらしい。

着ていたドレスの上半身があっという間に腰まではだけ、一段戻ろうと動いたとたん、今度は腰からするりと残りの部分が階段に落ちた。

無惨にもドレスの塊はルリルの足首までしか隠していなかった。

薄暗い階段に彼女の白い裸体がぼんやりと浮かび上がった。

僕には背を向けていた。

陶器のようにつやのある肌がファインダーをのぞいた僕の視界に写し出された。

「ルリル、顔だけ振り向いて。」

彼女は動揺せず僕に忠実に従った。

右の肩越しに顔を横に向け、にごりのない視線をレンズで捕らえた。

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