Dear.
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泣いて、泣いて、泣いて...


最後は声が掠れるほど泣いて、そして私は眠りについたのだと思う



気づけば知らない場所


真っ暗で、だけど下は浅瀬の水場


こんな所に見覚えはない、ということは泣き疲れて寝てしまい、ここは夢の中なのかもしれない



だけど、こんなに意識もはっきりしてて感覚もある夢なんて可笑しい

何処か諦めのある事を思いながらもバシャバシャと水音を立てながら何処か知らない場所へと歩こうとする




が、それはガシッ、と誰かに強く肩あたりを掴まれてしまい出来なくなる



「誰っ??」



妙に落ち着いてしまう

もしかしたら、霊とかそういう類(たぐい)かもしれないのに凄く落ち着く感覚



それはきっと私が誰だか分かっているから



この手はきっと.....


「兄さんっ、」



さっき散々泣いたのに、夢の中なのにはっきりと頬に涙が伝うことが分かった



「慶...、」



懐かしい声に誘導されるように私はゆっくり、ゆっくりと後ろを振り返る



そこにいたのは、やっぱり兄さんで、どこも変わっていないあの、人懐こい笑みを浮かべていた


「...兄さんは変わらないのね。」


昔のように少しおちょくるように言ってみると

「まぁな」

と返事をしてふにゅ、と私の頬を昔のようにつついた



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