Dear.
それから先の事はあまり覚えてない



だけど、心に空いたはずの穴が兄さんによって埋められていて、ようやく自分の気持ちと向き合えるような気がした



目覚めてしまえば、何時もの朝のはずなのに、どこか違うように見えて、夢なのだから信じる方が可笑しいのだけれど、あれが兄さんじゃないはずがない


そんな風に考えるようになってしまっていた




「私...、総司の事が好きです」



ポツリと斎藤様に漏らした一言


何故、斎藤様に言ったのか、それはよくわかないけど、彼が一番いいと私の直感が言っていた



「そうか、」


素っ気ない短い返事を返した斎藤様だったけど、なぜかこの人に言って良かった、と思う



「でも、私がお嫁に行くことは変えられないんですよね...

気づくのが遅すぎました」


あはは、っと悲しみを誤魔化すように笑うとポンっ、と肩に手を乗せられる


「大丈夫だ」


斎藤様は和やかな笑顔でそう言うとまた無表情になってスタスタ、と稽古に言ってしまう



「笑った...」



彼が笑うとこなんて始めて見た私は、斎藤様の仰った「大丈夫だ」その意味を理解していなかった






兄の幻が私を動かし、そして止まった私達の時をも動かし始める



総司、大好きよ━━━━━━━━。



その想いは貴方にもう一度


届きますか?
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