Dear.
溢れそうになる涙を堪えながら、早く解放されて欲しいと何度も願う



そして、なんとか身を起こしてみようと体を動かそうとした時だった



音も何もしないのに、誰かがいるのではないかという感覚



「だ..れ?」


恐る恐る口を開けば返事はない


が、誰かがいる、それだけは目が見えない中よく分かった


そしてその気配は徐々に私へと近づき、ハラリと取られる目を隠してきた布


目が月明かりにさえなれない中必死にその布を解いてくれた人を探せば黒い装束を来た者が一人


こちらに顔を向けて笑っている



「やま..、ざき様?」



「慶ちゃん、よくがんばったなぁ。」



ポンポンと撫でられる頭
疑問と同時に沸いてくる安心感


涙を必死に堪えては少し零し、堪えては少し零し、と繰り返しているうちにテキパキと足の治療を簡単にしてくれる山崎様



「どうしてっ..」


くぐもる声でそう聞けばあの懐かしい笑い方で


「総司のおかげやで?」


そう言って私を急いで担ぎ出す



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