Dear.
「...そ、じ..」
部屋を飛び出し、慶の声のする方を必死に駆けてゆく
ヒューヒュー、となんとも情けない音が喉からするが、そんなのはもうどうでもいい
「慶っ!!!」
「総司っ、総司ぃ!!!」
徐々にはっきりと聞こえ出すお互いの声
見え出す姿
慶は怪我をしたのだろう足を引きずりながらもこっちに向かってしっかりと歩んでいる
その姿でさえ、愛おしく感じてしまい、僕も走る速度を上げずにはいられない
そしてようやく触れ合う指先
それだけで身体の芯から震えた気がした
ふらふらな彼女を支えるように指先から、そして身体全体を抱きしめる
「そう、じっ...総司っ!」
「慶、慶っ、慶!!!!」
何度もお互いの存在を確かめ合うように名前を呼び合い、その度にギュゥ、と抱きしめる力を強くする
ここにいる、そんな実感が欲しかった
僕の腕の中にいる、そんな事実が嬉しかった
慶の、涙は見たくない、そう僕はいっけど、一部例外がある
こんな風に僕の腕の中で泣く嬉し涙は見たい。
そして、いつまでもこうやって抱きしめてあげたい
「慶、ごめん僕は君を離せそうにないや...」