Dear.
いや、もしかしたら総司だけじゃなくてみんな、みんな...そうなのかもしれない。



「...慶ちゃん、そんな事はあらへんで?

少なくともわいは慶ちゃんの兄さんの事を知らんし、ちゃんと慶ちゃんを見てる。
それは総司も一緒やとおもうけどなあ。」



いつもより優しい口調でそう言うと頭をポンっ、と撫でられる


「ほな、行こか。」


「....はい。」



目を細めて笑う山崎様の姿がなんとなく、なんとなくだけど清光様と重なる


いや、清光様が山崎様のはずはない

彼は兄が死んだ時に新選組には入隊していらなかったのだから


だが、そう想うのはきっと、どこか彼の魅力に惹きつけられているのかもしれない





”総司だけは嫌わんとってな”



ボソリ、と前で呟かれた山崎様の言葉が耳になんではいるはずもなく、そのまま橙色に染まりつつある京の町の中を歩いて帰る



彼の大きな背中。


黒装束の新選組の”影”としている姿も、こうやって今いる”光”の姿も少し違和感があるが、どちらも彼、山崎様である


もしかしたら、こんな風に私は人の一部分しかみれてなのかもしれない




ならば、もう少しちゃんと総司と、いや、総司達と向き合ってみよう。



ちゃんと、彼らが私に見せない部分もちゃんと見れるような覚悟をもとう



そう思ったのだ。



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