Dear.
「慶!!慶ってば!」
「ぁ...総司?」
あれから数刻。
私は夕食を作り、食べ、今は自室で隊士の破いた羽織の補修をしていたのだが、ぼーっとしてきたのだろう総司が部屋に入ってきたことにも気づかなければ、自分の人差し指に針が刺さっていることにも気づいてなかった
「いたい。」
血を拭き取り止血をするが、深かったのか中々血は止まらず、痛みが徐々に強くなる
「慶、貸して、僕がやったげるよ。」
素直に手を差し出すと、丁寧に止血や布を巻いてくれる
「どうしたのさ、ぼーっとしちゃって。
慶らしくないね。」
真剣な瞳で私の人差し指を治療しながら、そう話しかける総司
「....なんでも、ありませんよ。
ただ、ぼーっとしちゃってただけです」
「嘘、何かないと慶はこんな事しないよ?」
”はい、出来た。”そういって人差し指を開放すると、今度は瞳を捕らえられてしまう
「ほんと、なにも...」
だって、私の早とちりかもしれない
夕食できちんと紹介があった新入隊士達。
その中にいた伊東甲子太郎様
その人が...その人の存在が新選組に嫌な空気を持ち込んだなんて...
だから、言葉を濁らせてあえて言わなかったのに、いつも彼は一枚上手。