Dear.
それからしばらくたったある日の事だ。



私達、新選組はもといた壬生寺から西本願寺という大きなお寺へと本拠地を移し、活動を続けているのだが、もともとこの転居は山南様は承認しておらず、土方様と伊東様がそれを無視し西本願寺へと転居したらしい



それを聞いた後、山南様とは何回か本を貸してもらっているのだが、どこか元気がないような、そんな感じがしてならない



そして、今日も山南様が心配で本を返すという口実で、彼の部屋へと向かう



「山南様〜。」



すすーっと開くと文机に綺麗な姿勢で座っている彼の姿が目に入る



「こんにちは慶さん
もう読み終わったのですか?」



「はい!
山南様の持つ本はどれも面白くてつい、夜も寝ないで読んでしまうので...」



''迷惑でしたか?''そう付け加えると首を横に振って私を招き入れてくれる



「じゃあ、次は物語でも読んで見ますか?」


「ええ!ぜひ!」



わくわくしながら本を取ろうとする彼を見る


山南様は文学にとても長けている方だと思う
頭も良く、本も読む。

それに私が江戸で読んでいた本をほぼ彼も読んでいて、話がよくあうのだ


「これですかね。
南総里見八犬伝。
読んだことは?」


「いいえ、まだ...」


「では、ぜひ。」


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