約束は森の中~導かれて~
「またおいで」


 樫の木の穏やかな声がしました。

 その声にイブは木を見上げます。



「今度また、話をしよう。待っているから」

 帰りを促されました。

 いつまでもここにとどまっていても、
 記憶を思い出すことはないのでしょう。

 知っているはずの樫の木さえも
 教えてくれないのですから。



 イブは素直に頷きます。



 太陽の位置からすると、
 昼はとっくに過ぎているようです。



 パパとママも心配しているかもしれません。

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